第4章 不可分と可分

機械の中の幽霊 (ちくま学芸文庫)

機械の中の幽霊 (ちくま学芸文庫)

図式と生物体のこと


  • 同じ対象についても、その階層性の捉え方は一意的ではない。ケストラーは、この捉え方はおおまかには構造の階層性と機能の階層性の2つがあるという。
  • そして、これらの階層性は、それが純粋に記載的なものでないかぎり、それらが生み出されるにいたった過程を反映するという。
  • さらに、階層性の研究は新しい科学の一分科であるという。


階層性には、それが生み出されるにいたった過程を反映するというのは、進化の例が分かりやすかった。

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「種-属-科-目-綱-門という動物界の分類は、進化系統における関係を反映するのを目的としている。この場合、樹状の図式は原型的な「生命の木」を示すものである。」
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さまざまな種類の階層序列が共通に持っている性質または法則を探求することが、新しい科学であるということ。

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「それはむしろ「一般的システムの理論」というべきものであって、あらゆる種類の無機的・生物的・社会的システムに普遍的に適用できる理論的モデルと「論理的に相同な法則」(フォン・ベルタランフィ)をつくりあげようとする比較的新しい科学の一分科なのである。」
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  • 不可分なものと、無機的ホロンの自己調節性


生物の階層性を一番下まで辿ると、素粒子に行き着く。具体的には陽子、中性子、電子など。その下にはまだクォークとかがあって、そのさらに下は皆さんご存知のヒモ…なのかもしれない。それが正しいとして、そのさらに下があるのかどうかはわからない。この「わからない」が本文で使っている「みつからない」と同義語であると僕が勝手に思っているのだけど、本文ではこれにさらに続けて、階層性の末端は下へも(上へも)開いたままだと言っている。だから、末端まで全部ホロンなのだ。


無機的な自然においても「自己主張」と「全対帰属」に対応する(擬人的な言い回しを使わない)概念が存在し、それらの相反する力の平衡によって階層性の持つ安定性が実現されている。これらはニュートン力学の第三法則である作用反作用の法則が階層性に適用されたものだという。まぁ、あまり深くは考えないようにしよう。


  • 生物体について


生物の階層性は言うまでもなく明らかで、細胞器官なんかが特にすごく階層階層してる。そして細胞それぞれが、ちゃんと自律した全体として機能しているが、にもかかわらず、もっと上のレベルの構造もちゃんと一個のホロンとして完結している。すごいことだ。


共生という形でホロンどうしが一緒になってさらなるホロンを構成する。場合もある。

    • ミトコンドリアの仮説
    • 相利共生(異なる種どうしで)
    • 個体の集合が、それを含むより大きな集合の一器官を構成するようなクラゲ(つまり同種どうしで)
    • 蟻、蜂などの社会性昆虫(これも同種どうしで)

などなど。


プラナリアなどの扁形動物は、その個体というものをどう考えれば良いのか。さらに、カイメンやヒドラは細胞単位でバラバラに分解してやっても、時間が経つと集まり分化して個体になってしまう。多少特殊ではあるこいつらが象徴するように、個体という概念自体は、ホロンの一面を見ているにすぎないのだ。
(たしかに、ヒンドゥー教徒仏教徒の人にプラナリアの魂についてその意見を聞いてみたい。というか別にプラナリアに限らず、人間が個体を超越するような時代がくるか分かんないけど、そうなったときに、自我はどうなるんだろ。)


また、発生中の胚の細胞をいろいろいじってもちゃんと望みの器官や個体に成長するような実験事実からも、完全な自己完結的な全体というものは存在しないことが言える。そして、階層的に繋がったホロンのみが見出される。





前の章から続いてホロンの例と性質の説明でした。