第3章 ホロン


機械の中の幽霊 (ちくま学芸文庫)

機械の中の幽霊 (ちくま学芸文庫)


ついにホロン登場です。

社会的ホロンなどを例にとっていかに大事な概念かを説明してます。

  • 「ホロン holon」とは、階層的秩序について語るときに必要になってくるので、ケストラーが勝手に作った言葉。意味は、亜全体とか全体子とかのことで、つまり、「全体」でも「部分」でもあるモノのことである。段階的階層性を木(グラフ)で書いたときに、枝分かれしている部分のこと。とも言える。ギリシャ語のホロス holos (全体)に、プロトンとかニュートロンとかの on を付けたらしい。


「部分」とはそれ自体では存在を正当化されないもの。「全体」とはそれ自体で完結したもの。


-----本文引用-------------------------------
「しかし、このように絶対的な意味における「全体」とか「部分」というものは、じつはどこにも存在していない。生物の世界にも社会組織の中にも、われわれが見出すのは、しだいに複雑性を増していく一連のレベルの上における中間的な構造すなわち「亜全体」である。」
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(あんまり関係ないけど、本文に、ゲシュタルト心理学全体論的アプローチって書いてあった(全体は部分の総和よりも大きいみたいなことかな…)。僕の好きなゲシュタルト崩壊も、「全体」が崩壊するって意味なんだねー。文字の一部が消えたわけでもないのに、そこから意味を読み取れなくなるってのは、元々部分の総和とは違う何かがあったということになる。ふーん。ゲシュタルトって人の名前かと思ってた…)
ちなみに本文では、ホロンが、行動主義とゲシュタルト心理学の欠けた部分を象徴するものだ。とか言ってます。まぁ、(ケストラーは)どっちかと言えばゲシュタルト心理学に近い立場で、さらに新しい概念を加えた感じでしょうか。


  • ホロン型構造の安定性

なぜ、世の中のあらゆるところに階層性が見られるのか。それはその構造が安定だからだ。例えば、生物の進化においては、その過程に安定な中間形があれば、それが存在しないときよりもずっと早く進化が起ると考えられるし、(こういうのシミュレーションしてみたい…)その結果誕生した複雑な生物は、その構造に階層性を持つに違いない。逆に言えば、これによって自然に階層性が生まれ、より安定なものが淘汰されて生き残っていると説明出来る。
もちろん以上のことは、人間社会においても同じことが言える(しかし、人間社会を語る上で安定だというだけではその存在意義に足りない。人間の営みには、人の意図(本人が自覚しているかどうかに関わらず)が関わってくる。そこが人間を人間たらしめる要素なのだ。つまり、自然の根本的な原理というのは、「環境に対してそいつが物理的により長く存在し続けられる」ということだが、人間の場合は、……なんなんだろう?人間自体ではなくて、その作り出したモノについてなら「より興味を惹くモノ(?)」かな?自分的には)。話が逸れた…


  • ホロン形構造の独立性

今度は社会組織における階層性。支配が可能なより高次の権威の生ずる階層、それに伴った他の階層序列が存在する(って言っても、社会に限らず自然界だってなんだって支配階層性はある。自分の体だって、自分というホロンが、より下のレベルの階層に属する体のパーツを支配しているわけだし。)。
社会的ホロンの特徴は、より高次のレベルの階層にあるいくつかのホロンとの全体的な相互作用からくる独立性である。複雑な社会にあっては階層序列は多段階となり、各ホロンはそれぞれ一つの自律的、自己完結的なユニットとして働く。その、自律的に機能出来るようにするものが固定した規則であり、またそれによって限られた中でも許される余地が可変的な戦略である。ここに社会的ホロンの特徴が現れてくるのだ。つまり、個人レベルでの自己主張やイニシアティブの介在が。


-----本文引用-------------------------------
「自己主張的傾向はホロンの全体性の動的な表現であり、全体帰属的傾向はその部分性の動的表現である」
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エロスとタナトスの話はよく分からなかった…。