火星の人類学者

 
面白すぎ。
 
オリバー・サックスの火星の人類学者。
 
 

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫NF)

 
神経科医の書いた医学エッセイ。
色盲の画家、トゥレット症候群の外科医、自閉症の動物学者等々、興味深い患者のことを書いてます。
 
 
この著者は、それぞれの障害をあくまで患者の個性として理解しようと努力していて必ずしも悪としては扱っていない。
 
 
それぞれのエピソードが全て興味深くて、通勤時しか読んでないのにあっという間に読了してしまった。
 
 
この本を通して感じるのは、正常な人間の知覚している世界は非常に脆いということ。人間が脳の中に作り出している世界は、多分人それぞれで違っていて、相対的なものなんだと気付かせてくれる。
 
 
 
 
 
 
 
個人的に、特に衝撃だったのが、最後の自閉症の人の話。
 
「テンプルは学校で友達に強く憧れ、友達になると徹底的に忠実だったが、彼女の話しぶりや行動には他人を遠ざける何かがあり、友達は彼女の知性を尊敬はしても、仲間として完全には受け入れてはくれなかった。
………
他の子供たちには何かが起こっていた。非常な勢いで常に変化している微妙な何かだ。意志のやりとり、交渉、相互理解のすばやさ、それらがあまりに驚異的なので、ほかの子供たちにはテレパシーがあるのではないかと思ったほどだった。」
 
めちゃくちゃわかる。てか、これはおれのことだ。
 
この人は、周りの人間の感情や意志が理解できないので、自分のことを「火星の人類学者」のような気がするとまで言っている。
 
自閉症の人は、主観性、内面性に欠けていて、他人の感情、複雑な人間関係、比喩などが理解出来ない。
理解が出来なくても、パターンを学習し、慣れることは出来るが、共感が出来ているわけではない。
その理由として、社会的なしきたりや規範、文化的な前提についての暗黙の知識が欠けているからだと言っていて、これもまさにおれのことである。
普通の人は、経験や出会いを基本にその暗黙の知識を獲得し、積み重ねていく。しかし、何かの理由でそれが出来ないのだ。
 
自分の場合、原因となる脳の構造の欠陥は、ここに出てくる患者のそれとは違うかもしれない。しかし、現れてくる障害はかなり共通している。
 
 
  
とにかく、おもしろかった。おすすめ。